第9回日本ラブストーリー大賞 1次選考あと一歩の作品(6)

『赤羽パルテノン神殿』/サチル 

 あらすじ&コメント

小学生のニケはいつまでたっても19歳にしか見えない美貌のママから「あたしたち吸血鬼なのよ」と衝撃告白を受けるが本気にはしていなかった。だがある日、クラスメイトの山口くんの血をママが吸う現場を目撃してしまう。ママは、誰かを好きになっても愛してはいけない、殺してしまうから、と言うけれど、ニキは山口くんのことが気になりはじめて……。

文章がとてもしっかりしていて、構成もよいです。ただ吸血鬼テーマの展開が平凡であるのがもったいないです。基本的にネグレクト気味のママとニケの関係が主体となっていて、冒頭で暗示される、ニケがいくつも顔を持つようになる、という予言が達成されず、また山口くんとの関係も、なぜ愛したら殺してしまうのか、その問題が恋愛小説的には肝ではと思うのですが、その入り口で終わってしまうので、むしろその先が読みたかったです。

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